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これまで作ってきた作品の中でも、部員たちに特に思い入れがあるのが、「Wedding(ウェディング)」(2016年制作)をテーマにした作品です。
ウェディングというテーマ設定について、当時の部長(現高校3年生)さんはこう話します。「ウェディングは女子の憧れ。部活動で羊毛フェルトに取り組む中で、そのエレガントな世界観をいつか表現したいと思っていました。」
エレガントな世界観を表現するために、モチーフを「バラ」に据えました。なんと、作ったバラの花は約200個にも上ります。しかも、バラは既存のレシピをそのまま使うのではなく、上級生が自分たちの作品に合うようアレンジしたレシピをイチから考えたそうです!
しかし、この華やかな作品が完成した背景には、部員たちの奮闘がありました。ウェディングをテーマにしたいという強い思いはあったものの、顧問の先生には、何度もダメ出しされたそうです。当時の部長さんはこう振り返ります。
「羊毛という可愛らしいフワフワした素材でエレガントさを表現する難しさ、上級生にとっても手探り状態の技術を下級生に教えていくには時間がかかること、作品のデザイン・材料・配色などをゼロから試行錯誤し、自分たちのイメージを形にしていく困難さなどから、顧問の先生からは、なかなかゴーサインが出ませんでした。だからこそ、『絶対にやりたい!』という気持ちがわいてきました。当時は毎日、試作を持って職員室を訪ねてはダメ出しされ、改善してはアタック!を何回も繰り返し、ようやく『OK! これでいこう!』の言葉をいただきました。」
先生からのゴーサインは出たもののそこからまた、一山超えてはまた一山と試行錯誤の連続でした。例えば、理想とするバラならではの「エレガントさ」を表現でするために、花びらを1枚1枚作り、それを何枚か組み合わせて一つのバラの花を作ることにしました。花びらの形、うすさ、色、カーブ、重なり具合など試行錯誤を繰り返し、レシピが完成するまでに1カ月もかかったそうです。
バラの花びらは中学2年生以上の部員総動員で、毎日せっせと作り続けました。試作も含めると、その数はなんと1500枚。苦心したのは、花びら1枚1枚をいかに薄く作るかということ。花びらが厚いと、組み合わせたときにツバキのように見えてしまうからです。少しでも厚くなった花びらは、妥協することなく不採用にしたといいます。
実はこの作品、顧問の先生が生徒たちには内緒で「第27回ホビー大賞(2017年)」に応募したところ、見事奨励賞を獲得。精魂込めた作品が受賞したことは、部員たちのさらなる自信につながったそうです。
(第27回ホビー大賞・受賞結果 http://hobby.or.jp/hobbyaward27/)
ウェディングで培った技術と根性を土台に、2017年の文化祭では、「Bird Watching(バードウォッチング)」をテーマに、野鳥や大型の鳥などを制作しました。「リアルの追求」を求め、大きさ・形・色・表情・羽の素材感などにこだわりました。作品のディスプレイも実際の樹木を使って、鳥が樹にとまっているように見せるなど、空間を使うことでリアルな鳥を生き生きと表現しました。この作品でも、もとのレシピを自分たちでアレンジして作ったそうです。
参考にするのは実際の鳥の写真ですが、実際には平面で見ると体の凹凸や、角度によって変わって見える羽の色の微妙な違いなどがあります。立体として見ることで、そうした新たな発見があるのが面白かったと、ある部員は話していました。
この作品では、作った鳥たちを屋外に設置して写真撮影をすることも行いました。「鳥は本来外にいるもの。自然の中に置いてみよう!」と、鳥獣保護区でもある緑豊かな校内でのロケを実践してみたところ、不思議なことに室内で展示するよりも自然に溶け込み生き生きとして見えたそうです。「リアルさ」を追求した作品だからこそかもしれません。
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初期には個人が別々のものを作っていましたが、今ではテーマを設定して、製作中は悩んだり苦労しながら、上級生も下級生も協力して一つの世界観を作っていくというスタイル、活動内容を独自に成長・発展させてきたことが分かります。毎年作る中で部員のスキルも上がり、「去年よりももっといいものを」というモチベーションになり、よりハイクオリティな作品作りにつながっています。中高一貫校だからこそ部活に在籍できる期間も長く、先輩たちから技術を受け継いで、発展させていくことができているようです。
「作ることよりも、何をどのように作るのか、テーマ決めをするときが一番難しい」と手芸部のみんなは言います。さまざまな葛藤や、理想とするものを表現できないもどかしさなどを感じるようです。みんなで一つの作品を作り上げる喜びや、思いを形にすることへの情熱を感じられた取材でした。
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