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問屋が軒を連ねる東京・馬喰町。手芸専門の卸問屋として1948年に創業して以来、多くの顧客の要望に応えながら現在も営業を続けているのが「カンダ手芸」です。どのようなお客さんが利用しているのか、多くの卸問屋が廃業する中でも生き残ってこられた理由などを、同店に勤めて35年の店長・三谷知行さんにうかがいました。
――卸問屋さんというと、一般の小売店さんと何が違うのですか。
対象とするお客様が異なります。小売店は、消費者である個人の方が顧客ですが、私たち卸問屋は、手芸を生業としている方向けに販売しています。なので当店のお客様は手芸の講師をやっている方や、手芸店を営んでいる方が多いですね。
――馬喰町のような問屋街だと、周辺のお店の入り口には「一般小売りお断り」や「一見さんお断り」の看板を掲げているのをよく見かけますが、そういう理由からなんですね。
はい。ただ、当社は創業当時からのポリシーで、お客様を選ばないスタンスを貫いています。そもそもなにをもって小売なのか、という判断もできないですし、来店時は個人のお客様だったとしても、将来的に手芸教室の講師を目指している場合もあるからです。
――最近では街の手芸屋さんもあまり見かけなくなりましたが、御社はどのようにお客様のニーズに応えてきたのですか。
私がここに勤め始めたのが、ちょうどバブルが崩壊する直前で、当時は毛糸と生地の販売が主流でしたね。あのころは、営業に行けばどの会社も二つ返事で買ってくれましたが、バブルが崩壊してからは毛糸だけ専業でやっていた店は厳しくてどんどん廃業していきましたね。それから10年以内に、25店近くあった手芸関係のお店は激減し、今では当店を含めて2、3店になってしまいました。
毛糸が下火になっていくのを見越して、当社ではパッチワークキルトに力を入れて生地を販売してきました。先代社長が自らアメリカに渡って直接生地を買い付けていましたね。いまでもそのスタイルは変わっていません。
2016年には、本館の店舗のすぐ近くに「ステッチ館」として、手編みと刺繍に特化した別館を作るなど、少しずつ幅を広げてきました。
インタビューは、次のページに続きます。
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