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ハンドメイドに欠かせない「糸」。その糸を紡いだり、編んだりすることで表現し、世界で活躍する4人のアーティストの活動を紹介するクラフト・アート・ドキュメンタリー映画「YARN(ヤーン)」が、12月から公開されます。
今回は、この映画を北欧アイスランドから買い付けたkinologueの森下詩子さんにインタビュー。配給に至った経緯や映画の見どころなどについてうかがいました!
さらに、2ページ目では、公開に合わせて実施されたワークショップイベント「ニッティング・シネマ」の様子についてもリポートします!
独立系映画配給・宣伝会社で、宣伝担当として100本近い映画に携わる。2014年よりフリーランスで北欧に特化した映画配給を始め、フィンランド映画『365日のシンプルライフ』(2014)『劇場版 ムーミン谷の彗星 パペット・アニメーション』(2015)『ファブリックの女王』(2016)を共同配給。2017年12月より、アイスランド映画 『YARN 人生を彩る糸』を公開予定。
――この映画の配給を決めたきっかけを教えてください。
森下: これまで北欧には毎年仕事や旅行で訪れていますが、この映画は、昨年10月にアイスランドの映画祭に出席した際に偶然見つけました。その場で上映されていたり、大々的に紹介されていたわけではなく、手渡された資料に小さく載っていた作品でした。説明文を読んで、「これは!」と思い、すぐにプロデューサーに連絡を取りました。
――クラフト(手しごと)をテーマにした映画を求めていたのですか。
森下: 北欧に何度も滞在するうちに、北欧のライフスタイルと日本の共通点の一つに「クラフト」というキーワードが浮かんできました。北欧では、糸を使ったクラフトの代表格である編み物は、時代が変わっても生活に身近なもの。男性でも編み物をしますし、長い冬の夜に行う日常的な文化として残っているように思います。一方日本でも、今でこそ、おばあちゃんから編み物を教えてもらう、なんてことはほとんどなくなってしまいましたが、手しごとを大切にする気持ちはなくなっていないと思うのです。手しごとの価値を伝えられるような映画がないか、とずっと探していました。『YARN 人生を彩る糸』は、まさにそれを表現している作品だと感じています。
――見どころを教えてください。
森下: アイスランド映画ですが、日本人アーティストの堀内紀子さんも登場しています。カラフルなネットの遊具を世界中で作り続けていて、神奈川県・箱根の彫刻の森美術館「ネットの森」は、子どもたちに大人気の遊具であり、アート作品です。2009年からあるので、目にしたことがある方も多いのではないかと思います。
しかしながら、こうした作品をどういう人が、どういう思いで作っているのか、ということには、なかなか注目されてきていません。堀内さんが「人とつながる」アートに目覚めるまでの過程などは興味深いです。
――アートと聞くと、少し遠い存在に感じてしまう気がします。
森下: 仕事をする誰もが「いったい何のために、誰のために仕事をしているのか」と、一度は考えたことがあるのではないでしょうか。アートというと、アーティストなど、一部の特別な人のものと思われがちですが、実はそうではない。映画に登場するアーティストたちの作品も、常に受け手がいて初めて成立するものです。その人たちに対して、自分は何をしたいか、どうしたいか、ということが出発点となって生まれています。そういう意味で、仕事をする人の生き方としても共感できる要素があるのではないかと考えています。
――特に「こんな人にオススメ」という方はいますか。
森下: クラフトやハンドメイドを、やってみたいとは思っていてもなかなか踏み出せずにいる方にはぜひ観てほしいですね。この映画は、そんな方の背中を押してくれると思っています。
そしてもちろん、すでにクラフトを楽しんでいるという方にも観てほしいです。試写会では、編み物を仕事にしている女性から「私がやっていることが、認められたような気持ちになった」という感想をいただきました。クラフトやハンドメイドは手芸として「趣味」に見られがちで、なかなか価値を認められていない現状があります。この映画ではそんな現状に対して奮闘するアーティストたちが登場するので、仕事としてクラフトに携わっている方の励みにもなるのではないでしょうか。
(映画概要)
タイトル:YARN 人生を彩る糸
出演:オレク、サーカス・シルクール、ティナ、堀内紀子
監督:ウナ・ローレンツェン
公開日:12月2日(土)からシアター・イメージフォーラム他全国順次公開予定
オフィシャルサイト:http://yarn-movie.com/
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次のページでは、映画公開に向けて実施されたワークショップ「ニッティング・シネマ」に、編集部・加藤が潜入取材してきました!その様子をリポートしています。
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