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~ミシンの魅力 再発見!その2~
アナログだけどデリケート 手回しミシン 修理のゲンバ

ミシンの知られざる魅力に迫る企画「ミシンの魅力 再発見!」。
第一回は最新ミシンについて紹介しました。
第二回は、手動のミシンである「手回しミシン」を修理する現場を直撃取材!
電動ミシンが取って代わった今日、現在ではなかなか立ち会うことのできないアナログの手回しミシンの修理現場を、解体から組み立てまで見せていただきました。前回に引き続き、神奈川県藤沢市で創業103年のミシン販売店、藤沢ミシンの小野田努代表にお話をうかがいました。

手回しミシンは、前回ご紹介した足踏みミシンよりもさらにアナログな、右側についている手回しハンドルを手前方向に回しながら生地を縫うミシンです。縫えるスピードは足踏みタイプよりもかなりゆっくりになります。

現代の電動ミシンと大きく異なるのは、素材。現代ミシンはプラスチックなど軽量の物を使っているのに対して、手回しミシンは外側から中の部品一つ一つまで、金属を溶かし、鋳型に流し込んだ鋳物でできてます。小野田さんによれば、パーツの数は200~300点。現代の物とはけた違いに少ないですが、重さは約20㎏もあり、女性が一人で持ち上げるのはかなり大変な重さです。

今回修理するこの家庭用手回しミシン。同社が下取りしたもので、手回しハンドルがびくともしないほど動かなくなってしまっています。何が原因なのでしょうか。小野田さんに聞いてみました。

「部品を解体してみないことには原因は分かりません。ただ、多いのは、油の固着。鋳物なので、使い続けるためには日々油を差したり、ホコリを取ったりとメンテナンスが欠かせません。時間がたつと、差した油が固まって、動かなくなってしまうのです」

油といっても、なんでもいいわけではなく、ミシン専用の良質なものでなければならないのです。代表的なものにSF(エスエフ)油、という油がありますが、ご存知でしたか。
しかしこのことを知らずに、すぐに固まってしまうサラダ油を差してしまい、即修理が必要になるケースもあるといいます。油の質によってミシンの寿命が変わると言われるほど、デリケートなんです。

解体して修理できるのは「縫製機械整備技能士」という、家庭用ミシンから工業用まで、さまざまな縫製機械の整備を行う技術を認定する国家資格を持っている人。小野田さんも、もちろんこの資格の1級を取得しています!

さて、いよいよこの手回しミシンを解体していきましょう!

まずはミシンの下部から。肝である釜、次に針棒と押さえ棒、二股ロット…と、大小さまざまなドライバーを使いながら取り外していきます。

下部からドライバーを使って解体していく

中には意匠が凝らされている部品もあり、見るのも楽しい。

これだけの道具がありながら、小野田さんは迷いなく必要なドライバーを選んで解体していく

取り外した手回しハンドルを「ちょっと持ってみてください」と小野田さん。実際に持ってみると、見た目からは想像できないずっしりとした重みが。直径10㎝ほどですが、1㎏くらいはありそうです。金属ならではの重みですね!

手回しハンドル部分。直径10㎝ほどだがずっしりと重い

ここまで解体するのにかかったのはなんと約1時間!手順を知っている小野田さんでこれだけかかるのですから、覚えたての人では日が暮れてしまいそう…。30点ほどの部品に解体しました。

解体した部品

動かなくなっていた原因は、やはり油の固着。一つ一つの部品には、油が黒くこびりついています。
さらにばらばらにできるそうですが、今回の修理に必要なのはここまでなので、ひとまず解体は終了です。

こびりついている油を落としていきます。使うのは、油を溶かす溶剤スプレー。部品一つ一つにスプレーを噴射しながら、布で拭っていきます。徐々に金属のツヤが戻ってきています!ベトベトしていたのがスッキリ!

固くて動かないところは、溶剤スプレーをかけながら解体していく

スプレーで落ちない場合は、やすりや研磨剤を使う

きれいになった部品を、元通りに組み立てていきます。ねじがいくつもあり、素人の筆者にはもはやどれがどの部品か分からないですが…小野田さんは順番に並べていなくてもどこに取り付けるのかを把握しているそうです。さすがプロフェッショナル!

アナログのミシンをスムーズに動くようにするためには、単に元通りに部品を組み立てればいいわけではありません。ねじを締めすぎると動かなくなってしまうので、まずは部分的に仮付けして、手の感覚を頼りに調整してから、本格的に取り付けます。全部組み立ててしまってから、「動かない…」なんてことになったら、また解体からやり直しですもんね!

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