HOME>ホビスタ特集>インタビュー>“ハンドメイドの匠”に聞く vol.3 熟練職人が追求する ミニチュアドールハウスの「リアルな世界」

Special 特集

特集

“ハンドメイドの匠”に聞く vol.3
熟練職人が追求する ミニチュアドールハウスの「リアルな世界」

加藤: 金属加工のお仕事に携わっていたとはいえ、受注第一号のステンレス鍋は作るのに相当時間がかかったのでは。

河合先生: 実は、2年もかかったんです。

加藤: えっ!?鍋一つに2年ですか!試行錯誤を繰り返されたんでしょうね。

河合先生: ミニチュアドールハウスは、実物の12分の1の縮尺*で作るという基準があります。ですが、単に縮小するだけでは、不恰好だったり、リアルさに欠けてしまう。全体のバランスを見ながら調整して作っていくことが不可欠なんです。そこが難しくもあり、醍醐味でもあります。妻が納得する鍋ができるまでには、作っては見せて問題点を話し合い、やっとの思いで完成しました。

*24分の1や48分の1の縮尺の場合もあります

加藤: 店内に展示している商品には、値札もついていますが、これらは販売もしているんですね。

河合先生: 小学生の子どもから、ミニチュアドールハウスをこよなく愛する大人まで買いにきます。中には「こういうものを作ってほしい」とオーダーメイドで注文をいただくケースもあります。

加藤: お鍋一つでも数千円、冷蔵庫では数十万円の値段がついています。高価なのは、河合先生だからこそできる職人技を駆使して作られているからですね。
そんな河合先生の「渾身の一品」をご紹介いただけませんか。

河合先生: このまきストーブです。ちょっと持ってみてください。

加藤: うわっ、重たい!ずっしりしていますね。

河合先生渾身の一品のまきストーブ

河合先生: これも本物と同じ素材を使っています。完成までに3年近くかかりました。ミニチュアなので、飾って鑑賞して楽しめれば十分なはずですが、このストーブは実際にまきを入れて、火をつけることもできるんですよ。

扉を開けて、左側のスペースに木材を入れて火をつけることができる

加藤: そこまでリアルに再現しているとは驚きです。これほどまでに手の込んだものを作りたいという原動力は、どこから湧いてくるのですか。

河合先生: ドールハウスをのぞきこんだ人が「わぁっ!」と、驚きや喜びで笑顔になったときには、作ってよかったと心から感じます。そのために、オーダー品を作るときはお客さまの要望をすべて満たすように作ります。納得できない部分は徹底的にやり直します。
購入したお客さまの中には、ドールハウスを部屋にどのように飾っているかなど、連絡をくださる方も多いです。金属加工の仕事では味わうことのできなかった、このハンドメイドならではの喜びです。

加藤: 金属以外の、食材や紙を使った部分も河合先生が作っているんですか。

河合先生: 食品や花などの粘土を使うものは妻と娘が、ポスターなど紙を扱うものは娘がそれぞれ担当して、一つの作品を作り上げています。お互いに相談しながら作っています。

粘土を加工する際に使っている道具。つまようじを使用することもある。どんな道具を使っても、一番頼りになるのは、長年培ってきた指先の感覚だ

食べ残しの様子も再現。食材は、食感まで伝わってくるようだ

加藤: すごく細かいところまで再現されているので、それを発見しているとつい夢中で見てしまいます。その場の音やにおいまで伝わってくるようです。

河合先生: 作るときには、実際の場所に何度も足を運んだり、現物を自分の目に焼き付けて、作品に反映するようにしています。
先ほどの中華料理店やレストランもそうですが、「実在の店を再現してほしい」と、店のオーナーから依頼をいただくことも少なくありません。その際には、クッキングストーブ一つとっても「何年製の何型」など、指示が入ることもあります。オーナーにとっては、そのお店で過ごした時間はかけがえのないもの。その思いも汲みながら、のぞき込んだ人にその場の雰囲気やあたたかみまで伝わるように、まずは自分たちがその場にいる気持ちで作ることを大切にしています。

店内の様子。ひとつひとつの作品に、さまざまな発見がぎっしりと詰まっている

加藤: 一点一点、妥協することなく細部までこだわりを注ぎ込んでいるからこそ、五感で楽しめる作品に仕上がるんですね。河合先生、本日はありがとうございました。

ミニチュアドールハウスのWebサイトでは、商品情報のほか、展示会やイベント情報も発信しています。
http://minityuan.ocnk.net/page/31

カテゴリー: 

 

Archive

その他の特集記事