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ホビスタ読者の中には、幼少期にハンドメイドができるおもちゃで遊んだことのある方も多いのではないでしょうか。今回は、バンダイさんとタカラトミーさんの最新ハンドメイドおもちゃをご紹介。お子さんでも見本通りの作品を完成させられるように作りこまれた商品は、大人もつい夢中になってしまうこともあるようです。各社の商品をご紹介します。
<この記事で紹介するハンドメイドおもちゃ>
① バンダイ 「オリケシマルシェDXボックスセット」
② タカラトミー 「すみっコぐらし モコもじオリーナカラフル」
(https://girls.channel.or.jp/orikeshi/lineup/marche_dx/)
<商品概要>
対象年齢:8歳以上
メーカー希望小売価格:6,500円(税抜き)
内容:デザインシート10枚、ケシゴムシート(9色・計43枚)、ハーフケシゴムシート(3色・計3枚)、ミラクルスティック(乳白色)70本、ハーフミラクルスティック(うすピンク色)20本、本体、ピンセット、スペーサー、ツールボックス、支柱パーツ2個、ペーパーアイテム一式
発売日:2019年7月
――オリケシマルシェDXボックスセットは、どのようなおもちゃなのか教えてください。
まず、「オリケシ」という商品は、ケシゴムシートをちぎった小さな消しゴムスティックを組み合わせ、水をつけてから電子レンジで温めることで消しゴム同士がくっつき、動物や食べ物などの形をしたオリジナルの消しゴムが作れる商品です。
オリケシの「デラックス」シリーズは毎年年末に向けて発売しており、作れる消しゴムのバリエーションが多い商品です。「オリケシマルシェ」ではマルシェ=市場をモチーフにし、23種の動物や食べ物モチーフの消しゴムが作れます。
――「消しゴム」に着目した理由を教えてください。
文具というのは、学校に通うお子さんに取って身近な物ですし、作って楽しむだけでなく、そのあとに「使う」という実用性もあります。特別な物ではなく、日常生活の中で触れる物だからこそ、気軽にプレゼントすることもできます。
本体が内容物のデザインシートやケシゴムシートなど一式を収納できる道具箱のようになっているのですが、それをマルシェに見立ててデザインしているので、作った消しゴムを上に並べて遊ぶこともできます。
――このおもちゃで遊ぶことを通じて、利用者にどのようなことを提供したいと考えていますか。
作ることのプロセスそのものを楽しむことや、完成した時に味わえる達成感や満足感を得られるように開発しました。
こうした達成感などを味わえるためには、誰が作っても一定の品質のものが完成するように設計されている必要があります。頑張って作ったのに、見本とは程遠いものしか作れなかったら、作るのが嫌になってしまうからです。オリケシは作り方もシンプルですし、お客様からも見本通りのクオリティが高いものが作れることへの喜びの声をいただいています。
女性は、子どもであろうと大人であろうと「何かを作りたい」という気持ちは、普遍的にあると感じています。そして、自分のためではなく「誰かのために何かを作ってプレゼントしたい」という気持ちも同時にあるようです。プレゼントすることでコミュニケーションも生まれますし、もらった人に喜ばれたら作るモチベーションにもなりますよね。
――確かに、作った物を誰かに見てほしい、ちょっと自慢したい、という気持ちもありますよね。
イメージ通りに作れることで、もっと作ってみたい、という気持ちや、自分でアレンジする想像力も育まれるのではないかと考えています。手間暇をかけた「手作り」には、既製品にはない価値があります。小学生くらいの年齢のお子さんに取って簡単にオリジナル作品が作れて、それが人に喜ばれるという体験は、ハンドメイドだからこそできる特別なものなのではないかと思います。
――実際に購入されるお客様は、どのような方が多いですか。
お子さんが「欲しい」と思って購入されることが大半ですが、購入するかの最終判断は親御さんです。その際、「実用性がある」という点が購入を後押しする要素になっているようです。オリケシについては、作ったあとも消しゴムとして使えることが購入のハードルを越えやすくしているのではないでしょうか。手先を動かして作る、想像力を使うという点も知育玩具と近いものがありますし、「子どもにやらせたい」と感じさせられるのはハンドメイド玩具ならではだと思います。
――購入したお客様からは、どのような声が届いていますか。また、想定していなかった楽しみ方などはありますか。
「我が子が一つのことに集中している姿を見られてうれしかった」という感想をいただいたり、親子で楽しんでいるお客様も多くいらっしゃいます。中には、親御さんから「ハマりました」という感想をいただくこともあります。普段ハンドメイドをしない親御さんがハマってしまうのは、何かに没頭できる時間が心地よく感じられるからではないでしょうか。
同梱されている以外のデザインシートを、ウェブサイト上で無料ダウンロードできるようにしています。お客様ご自身でデザインを考えられる無地のシートも用意しているのですが、実はこの無地のシートのダウンロード枚数が最も多いんです。オリジナルのデザインで作った作品を募集したコンテストを実施した際も、実に様々な工夫を凝らした作品が寄せられました。親子で協力した作品も見られ、親子間のコミュニケーションのきっかけにもなっていて、アナログの遊びならではの良さだと感じます。
――今後増やしていきたいジャンルや注目しているハンドメイドはありますか。
大人がやっていることは、お子さんも「やりたい」と思うもの。ハンドメイド業界でトレンドになっているテーマを子供向けにアレンジしたり、古くからある編み物などを、新しい見せ方で商品化していけたらいいなと思っています。
<バンダイおすすめ 定番ハンドメイドおもちゃ>
Canバッチgood! (カンバッチグー)
(https://www.canbadgegood.com/)
オリジナルのカンバッチが作れるおもちゃ。この商品も、お子さん一人でも見本通りのカンバッチを作ることができます。自分で書いたイラストなどもカンバッチにできるので、メッセージを描いて伝えるオリジナルプレゼントとしても活躍します。
男女問わず、また、お子さんだけでなく大人が購入することも多いそう。同じコミュニティの仲間に作ったカンバッチを配ることなどにも活用されているそうです。
お話をうかがった方
バンダイ
トイ事業カンパニー
カテゴリーデザイン部 企画4チーム
アシスタントマネージャー
三井あゆみさん
バンダイ ウェブサイト
https://www.bandai.co.jp/
(https://www.takaratomy.co.jp/products/sumikko/)
<商品概要>
対象年齢:6歳~
メーカー希望小売価格:9,200円(税抜)
内容:
本体(1)、クシ(1)、シャトル(3)、平織りプレート(1)、ぬい針(1)、織り出し棒(2)、パンチカード(18)、タテ糸(白)(1)、ヨコ糸(こげ茶)(1)、ヨコ糸(水色)(1)、ヨコ糸(白)(1)、ヨコ糸(ピンク)(1)、ヨコ糸(うす茶)(1)、ヨコ糸(クリーム)(1)、ヨコ糸(黄緑)(1)、取り扱い説明書(2)
発売日:2019年10月26日
――「すみっコぐらし モコもじオリーナカラフル」では、どのようなものが作れますか。
タテ糸をセットして、シャトル(ヨコ糸を通すための道具)を左右に抜き差しして繰り返していくことでマフラーなどが作れる織り機です。セット内容ではすみっコぐらしのメイン5キャラクター織り込んだマフラーが作れるほか、アルファベットの柄も織ることができます。織り込んだニットをバッグや帽子などの小物に貼り付ければオリジナルグッズとしてもアレンジできます。
(CAP すみっコぐらしのキャラクターやアルファベットの文字を入れたマフラーが作れる)
――以前の同商品から今回の商品でアップデートしたのはどのようなことですか。
シャトルが従来の2本から3本使用可能になったことで、色のバリエーションが2色から3色で織り物ができるようになりました。2色では、文字や柄にとどまっていましたが、3色展開になったことで表現の幅が広がり、キャラクターの柄も織れるようになりました。今回は、対象年齢の女児の人気を集めているキャラクター「すみっコぐらし」の起用によって、ハンドメイドに興味のなかった方にも効果的なアプローチになるのではないかと期待しています。
――この玩具で遊ぶことを通じで、利用者にどのようなことを提供したいと考えていますか。
織り物のおもちゃがほかのハンドメイド玩具と大きく異なる点として、1つの作品を完成させるのに比較的時間がかかることです。10分程度で完成するハンドメイド玩具は多数ありますが、織り機は1、2日かかることもあるでしょう。慣れれば30分ほどで完成させることもできますが、こうしたじっくりと取り組み、完成に近付いていっている過程を楽しめるという点も、織り機ならではの醍醐味ではないかと考えています。
――作っている時間が長いほど、作品への愛着もわくかもしれませんね。
ご購入者の満足度も、5段階評価(数字が大きいほど満足度が高い)で5と4と回答した方が全体の9割を占めます。時間がかかるからこそ、「自分で作っている」という実感もひとしおであり、そのあと作品を身に着けるときの喜びも大きくなるのではないかと思います。「自分で市販されているようなマフラーが作れた」、ということが満足度にもつながっているようです。
――織り機玩具が長きにわたって現代でもなお支持されている理由はどのようなことだと思いますか。
編み機や織り機のおもちゃは30年ほど前からありますが、仕様はほとんど変わっていません。女の子は、時代が変わっても普遍的に編み物や織り物に対する興味があるのではないかと考えています。
また、ご購入後のアンケート調査では、遊んだ後にも完成物を日常生活で使うことができるという実用性、指先を動かすことによる知育玩具としての機能などが、親御さんに取って「子どもにやらせたい」という動機につながっていることが分かりました。親御さんの中には、ご自身が親から編み物を教わったり、それが生活で役立った経験なども後押しになっているようです。
――先ほど、完成させるのに比較的時間がかかるというお話がありましたが、「難しそう」とか「完成させられるか不安」という印象を与えてしまうような気がします。どのように払しょくされていますか。
確かに、使ってみる前は「完成させられるか不安」という声もありますが、アンケートを見る限りでは、「ちゃんと作れた」という回答がほとんどです。織り始めのセッティングに多少難しい部分があるのですが、「タカラトミー公式YouTubeチャンネル」でセット方法や織り方のコツなどを紹介するなど、やってみたいという気持ちがそがれないようにしています。
――実際に購入されるお客様は、どのような方が多いですか。
購入者の平均年齢は7~9歳女児で、織り物に初めて挑戦するお子さんが興味を持ち、購入いただくことが大半です。価格が1万円ほどの商品でもあるので、お誕生日やクリスマスなど記念日のプレゼントとしての需要が多いと考えています。親御さんはもちろんですが、祖父母がお孫さんに選ぶ際にも、実用性や知育玩具に近い商品として印象よく映るのではないかと考えています。デジタル化が進む現代において、編み物や織り物といったアナログ行為が新鮮味をもって好意的に捉えられている点も背景にあるようです。
――ホビスタの読者でもある、手芸愛好家(大人)でも楽しめるポイントがあれば教えてください。
セットに含まれている毛糸だけではなく、市販の毛糸(並太推奨)を使っていろいろなアレンジができます。パッケージで提案しているのはマフラーなどの平面のものですが、複数のパーツに分けて織り、それらをつなぎ合わせてポーチや人形の服、帽子などを作る方もいらっしゃるようです。実際に、2015年に発売した商品の購入者のうち1割は、成人の方がご自身で使用するためでした。
――注目しているハンドメイドのジャンルなどはありますか。
ミシン系のハンドメイドおもちゃの展開はしていきたいと考えています。「フェルティミシン」という商品をすでに販売しているのですが、針を使わずにフェルトを縫い合わせることができる商品です。女児玩具の中でも、こうした糸物玩具は毎年平均的に好まれる商品群でもあるので、今後も「作りたい」という気持ちを喚起するようなラインナップを増やしていきたいと思います。
<タカラトミーおすすめ トレンドハンドメイドおもちゃ>
映画すみっコぐらし あむあむたまごポンポン(10月26日発売)
https://www.takaratomy.co.jp/products/sumikko/goods/movie.html
すみっコぐらしのキャラクターの編みぐるみが作れるおもちゃ。毛糸をセットしたら、ハンドルを回すだけでマスコットが完成する。親御さんと一緒に作って楽しむことも多いそう。
(お話をうかがった方)
タカラトミー
マーケティング本部 ガールズ事業部
係長
山越雄貴さん
タカラトミー ウェブサイト
https://www.takaratomy.co.jp/
(取材を終えて)
作る喜びだけでなく、それをプレゼントする、という連鎖は、時代が変わっても受け継がれているものなのだと感じました。お子さん向けのおもちゃとはいえ、大人をも夢中にさせる魅力を持ったハンドメイド玩具。手先を動かし、想像力を使う知育玩具としての側面も持つので、クリスマスプレゼントとしてもおすすめです。これを機に、各社のハンドメイド玩具をチェックしてみては。
カテゴリー: 物作り
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