特集
長い歴史を持ち、今も根強い人気の編み物。なかでもかぎ針を使った編み物は、用途や季節に合わせて糸を選んで作る、通年使えるバッグやドイリー、アクセサリーなどが浸透しています。
かぎ針について、編み物作家さんたちは、「メーカーによって使い勝手が全然違う」といいます。
そこで、今回ホビスタではかぎ針の国内メーカーにフォーカスし、製品へのこだわりや使うメリット、どんなかぎ針がどんな方に向いているのかを聞いてみました。
1940年創業、京都市に本社を置くハマナカ株式会社(以下、ハマナカ)は、“手芸を通じて創造するよろこびを一人でも多くの方々に”という理念のもと、手芸手編み糸を主力製品として国産手芸用品の企画・製造・卸を一貫して行っている企業です。
創業者・濱中利基男氏が、“もっと美しく、もっと編みやすく”の思いで手芸糸の研究に没頭し、できあがった手芸糸が1959年発売の「アンダリヤ」。それまでにない風合いと編む楽しさは、もの作りと工夫が大好きな日本の女性たちにまたたく間に広がって、一大手芸ブームをまき起こしました。
そして、創業者の思いは手芸手編み糸だけではなく、道具の開発にも受け継がれています。
そんなこだわりの詰まった“アミアミ両かぎ針ラクラク”について、本社営業部 営業推進課
の間瀬さんにお話を伺いました。
-アミアミ 両かぎ針ラクラク(以降 アミアミ)は、どんな製品なのでしょうか-
かぎ針の持ち方と、編みやすさの関係を重視した製品です。
金属製かぎ針の指で握る部分は、平たい形状のものが多いのですが、アミアミはこの部分に エラストマー樹脂(※)製のグリップをつけました。
※エラストマー樹脂:軽量で弾力性のある素材。
グリップをつけることで、実現できたのは次のふたつです。
・特殊形状のグリップが指にフィットして、長時間の使用でも疲れにくい。
・かぎ針編みが初めての方は、グリップに合わせて針を握ることで正しい持ち方が自然に身につく。
このような特長があるので、かぎ針の握り方から知りたい初心者の方から、力まず長時間編み続けたい上級者の方といった、さまざまなレベルの方に、長く愛用いただけます。
-グリップがこの形状になった理由や、誕生秘話を教えてください-
「針を握る指の形に沿うかぎ針を作るには?」という部分にフォーカスし、グリップについていろいろ工夫をしたところ、この形になりました。
かぎ針の持ち方は、編み続けられる時間や出来栄えに関係してくる大切な部分です。
直接お会いして握り方を説明することができないお客様方に、“よい持ち方をつかんでいただく方法はないだろうか?”と試行錯誤を繰り返してきました。
その中で、“針をにぎるだけで、よい持ち方になるようにできたら、説明がなくても理想的の持ち方をつかめるかもしれない!”という考えにたどりつき、開発されたのがこのアミアミのグリップです。
-ハマナカのかぎ針は両かぎ針のため、初心者の方でも揃えやすく、はじめてのかぎ針としてとても使いやすいという声をよく聞きます。両かぎ針にした理由はありますか?-
1本の針で2つの号数に対応できる便利さを求めて、両かぎ針になりました。
これは、弊社ならではの「シンプルかつ、なかなかない特長」だと自負しています。
弊社は手芸手編み糸の製造販売がメインですが、編み物に欠かせない編み針についても喜びの声を聞けるのは、大変嬉しいですね。
-最後に、アミアミのアピールポイントをお願いします-
アミアミの一番の特長は持ちやすさですが、それ以外にもかぎ針としてのすべりの良さにも、ぜひ着目していただきたいです。かぎ針は、すべりの良さで編みやすさやスピード、編み上がりまでの時間、糸を持つほうの手への負担が軽いというメリットがあります。
また、グリップは号数毎に色が異なります。かぎ針を選んだり替えたりしたいときに動作がスムーズになるのに加え、カラフルで見た目も楽しいですよ。
持ちやすさ、編みやすさ、そして見た目の楽しさにもこだわったアミアミで、かぎ針編みを多くの方に楽しんでいただきたいです。
-ホビスタ編集スタッフ、編み物初心者が実際にアミアミで編んでみました!-
グリップ部分が三角形で、一度握った状態からずれにくいです。かぎ針の持ち方は鉛筆と同じですが、グリップ部分に親指、人差し指、中指を添えると、自然と良い持ち方に。力まずに編めるので、よい持ち方が自然とわかる、そしてそのまま編み続けられることを実感しました。
大阪に本社を置く老舗の手芸用品専門メーカーのクロバー株式会社(以下、クロバー)。
1925年の創業以来、「ハンドメイドを通じて世界中の人々を幸せにする」の理念のもとに、レース針・かぎ針から事業をスタートし、さまざまな手芸用品を生み出してきました。
ハンドメイドを楽しむ人に「気持ちよく楽しく使ってもらいたい」という思いから、徹底した高品質へのこだわりとユニークな発想、そして新しいアイデアを形にする製品開発に取り組み、現在では「クロバー」ブランドは高品質の代名詞として、日本国内だけでなく世界中に広く知られ、愛用されています。
また、ユニークな発想と新しいアイデアを形にする製品開発から生まれた、デスクスレダー(※1)や、スーパーポンポンメーカー(※2)などは、ハンドメイド好きな方ならご存知のものも多いと思います。
※1:さまざまな太さの針に、簡単に糸通しができる道具
※2:誰でも簡単にきれいな真ん丸のポンポンが作れる道具
クロバーが創業当初から作ってきたかぎ針が、現在はどのような形になっているのか。そのこだわりについて、マーケティングディビジョン マーケティンググループの渋川さんに伺いました。
-かぎ針は何種類か販売されているかと思いますが、特におすすめの商品を教えてください-
現在かぎ針は、昔からお馴染の金属製タイプに加えて、持ちやすさを向上させた2つの製品を販売しています。
中でも、お客様の支持を多く受けているのが、かぎ針「アミュレ」です。
商品名の「アミュレ(Amure:)」は「Amu(編む)」と「re(リピート)」を組み合わせた造語です。
「ずっと編んでいたい!」というメッセージを込めました。
-かぎ針「アミュレ」は、どんな製品ですか-
かぎ針「アミュレ」は編みやすさにこだわった商品です。
編みやすさの理由は2つあります。
1つめは「針先形状」。
針先の形状をかぎ針の基本動作をかんたんに確実に行える工夫をしています。具体的には、“小さめの針先”と“深めの切り込み”の2点です。
小さな針先は、編み目に入りやすく目を拾いやすくなる、深めの切り込みは、編み目から糸を引き抜く時に、糸が外れにくく糸を引き抜きやすくなるというメリットがあります。
このような工夫により、初心者の方でもかぎ針編を楽しんでいただけます。
2つめは「手にやさしい持ちやすいグリップ」です。
立体的なカーブで作られたグリップは、自然に指先にフィットします。グリップ全体が手になじみやすく、ソフトな手ざわりのすべりにくい素材でしっかり握れるので、余分な力をかけずに編むことができます。手が疲れにくい設計なので、長時間編みたい中・上級者の方にもおすすめです。
-アミュレはサイズ展開も豊富ですね-
かぎ針「アミュレ」は2/0号から10/0号の10サイズ、ジャンボかぎ針「アミュレ」は7mmから15mmまでの5サイズでの展開となっています。ジャンボかぎ針は太い糸もザクザクと編めるので、バッグづくりなども楽しんでいただけますよ。
また、サイズごとにグリップの色が違うので、使いたいサイズがひと目で分かるようになっています。
-最後に、アミュレのアピールポイントをお願いします-
編みやすい針先、そして長時間編んでも疲れにくい、ソフトで指にフィットするグリップが自慢です。
サイズごとにカラーを変えた、カラフルでおしゃれなタイプのかぎ針「アミュレ」は、編み物の時間を楽しく彩ってくれます。ぜひ「アミュレ」を使って、編み物を楽しんでください!
-ホビスタ編集スタッフ、編み物初心者が実際にアミュレで編んでみました!-
グリップが少し太め。素材がやわらかくて、握りやすいです。そして、かぎ針自体扱いやすいので、編む動作がスムーズな印象を受けました。動作が楽なのとグリップのやわらかさから、変に力んでしまうこともなく、長時間編み続けても疲れませんでした。
「たくさんの人に、編み物を楽しんでもらいたい」「長い時間、楽に編んでほしい」という共通する思いで作られたかぎ針ですが、ハマナカは正しい持ち方が出来るグリップにフォーカス、そしてクロバーは針先のつくりを工夫して編みやすさを追求して、かぎ針を開発してきたことがわかりました。
また、どちらの製品もグリップをカラフルに持ちやすくしている点に、ユーザーに「編み物を長く楽しんでもらいたい」という思いも感じます。今回の記事は、久場和代が担当しましたが、伺った内容から、長年編み物を楽しむ母が、ペンケースの中に何本も入れている同じようなかぎ針の中から、グリップ部分に小さく刻まれた号数を都度確認しながらかぎ針を選ぶ姿を何度も見かけたことを思い出しました。
カラフルなグリップは、小さな数字の号数が見づらい方でも一目でかぎ針を選べる、使う人にやさしいデザイン。そして、持ちやすさと編みやすさへのこだわりからは、編み物を長時間、趣味や仕事として長く楽しんでほしい、という作り手の心遣いと熱意を感じます。
これまでかぎ針編みに何度も挑戦したものの、目がうまく拾えなかったり、金属のグリップで指が痛くなったりで挫折した経験がある私ですが、今回の取材を通して、今までうまくいかずにかぎ針編みに抵抗がある人でも、アミアミやアミュレのようなかぎ針なら、かぎ針編みが楽しめそうだと思えました。
かぎ針編みが大好きな方はもちろん、一度はやってみたかったと思っている方も、かぎ針選びにこだわって自分に合う道具を探すと、さらに楽しい編み物タイムを過ごすことができそうですね。
カテゴリー: 物作り
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