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――店長さんはもともとお店を継ぐつもりだったのですか。
店長さん: 2011年に祖母が突然倒れてしまったのがきっかけです。母はずっとお店を手伝っていたのですが、私は会社勤めをしていました。まだまだ在庫もたくさんあるし、そのままお店をたたんでしまうのはもったいないなと思ったのです。幼い頃から顔なじみのお客さまもいらっしゃいましたし、私自身も祖母に編み物を教えてもらったりと手芸は好きだったので、やってみようと決心しました。
――地域に根差したお店であることを実感するのはどのような時ですか。
店長さん: 近所の老舗仕立て屋さんや、以前プロのパタンナーだった方などに、自分のサービスや商品を展示してほしいとご依頼いただくこともあります。こうしたつながりも、地域に根差した店ならではだと思います。
この商店街も、かつてと比べると様変わりしました。個人商店が減り、最近ではチェーンの飲食店の出店が目立ちます。昔からあった両隣のお店も、ここ数年でシャッターを閉めました。
当店も、祖父母のときと比べると、お客様の数は減っています。でも、お客さまに「ずっと続けてほしい」と言っていただけることもあり、「まだまだ頑張らなければ」という気持ちになりますね。
高齢のお客さまには手芸を生きがいにされている方が多く、中には「家に毛糸玉がなくなると不安」という方もいらっしゃるほどです。編み方や「次に作るのにおすすめのものは?」といった相談を気軽にしていただけるのは、商店ならではだと思います。ネットで手軽に購入できる時代ですが、当店を必要としてくださる方のためにも、続けていきたいと思います。
(取材を終えて)
実は取材中に、創業者である、店長さんのおばあさんに編み物を習った馴染みのお客さまが「次のイベントで出品するのに、おすすめの作品を教えてほしい」とご来店されました。
店長さんは本を見せながら「こんなのはどうですか?」と提案したり、「この太さの毛糸なら編めるかもしれません」など、お客さまの好みなどを把握されていることが伝わってくる接客をされていました。
そのお客さまは「ここに初めて来たときは、作り方が全く分からなかったけれど、いろいろな編み方を教えてもらったおかげで、今でも夢中になれる趣味があってうれしいです」と笑顔で話していました。
取材が終わっても滞在されている様子を見て、このお店の居心地のよさを感じました。
(店長さんイチオシ商品トップ3!)
さまざまな商品を扱っている中でも、さかえ手芸店さんならではのイチオシ商品3点をうかがいました!
<初代から取り扱っているボタン>
ボタンの卸で創業した同店では、創業当時から取り扱っているボタンが今でも販売されています。その種類は、街の手芸屋さんではなかなか見られないほど豊富。今では販売されていない貴重なボタンが見つかるかも。
<元プロの手作り!保険証入れ>
ご近所にお住いのお客さまの作品。かつてパタンナーとして活躍されていた方が飛び込みで「この商品を置いてほしい」と来店したそうです。プロとしてお仕事されていたこともあり、細部まできれいな仕上がり。お薬手帳も入り、人気の一品。
<ダイヤモンド毛糸 タスマニアンメリノ>
ダイヤモンド毛糸を扱っているお店は多くはないそう。ちくちくしないのが特徴で、マフラーやセーターを編むのにぴったり。
(お話をうかがったお店)
さかえ手芸店
http://www.higashijujo.com/sakae.html
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