特集
ハンドメイドに関する新商品やプロモーション、ハンドメイドを通じた活動を行った企業・団体を表彰するホビー産業大賞。2018年で第18回目となった同大賞の経済産業大臣賞を受賞したのは、1922年に創業した石川金網(株)さんの金網折り紙「おりあみ/ORIAMI®」です。今回は経済産業大臣賞受賞を記念して、おりあみがどのようなものなのか、誕生の背景や活用方法などについて、石川幸男社長にうかがいました。
――金網の製品がたくさんディスプレイされていますね。まずは御社の事業について教えてください。
当社は金網メーカーとして1922年(大正11年)に創業しました。私で三代目になります。主に企業(BtoB)向けの金網製品を製造しており、自動車部品や工場設備、建築関連、身近なところではコンビニエンスストアの揚げ物用のバスケットにも、当社の製品が使われています。
――いろいろなところで使われているんですね!今回ホビー産業大賞を受賞された「おりあみ」はどのようなものなのでしょうか。
丹銅という、金色のような光沢のある素材を使っています。織物を作るときのように縦糸と横糸の代わりに糸状の丹銅を使い、専用の織機で織っていきます。軟らかいですが、金属なのでしっかりしており、紙では表現しづらいかっちりとした表現やふんわりとした折り目もできます。細かい目地があるので、透け感があるのもおりあみの特徴です。形が崩れにくいので、作品として残しやすいです。
――確かに、触った感じはぱりっとしていますが、金属とは思えない柔らかさですね。でも、企業向けの製品を作っている御社が、なぜ一般ユーザー向けの商品作ろうと考えたのですか。
おりあみの誕生のきっかけは、2011年の東日本大震災です。工業用の製品のみで経営してきた当社は、当時受注がかなり落ち込みました。そこで、金網を生かして、一般の方向けの製品を何か作れないかと、新商品開発に乗り出しました。
その中で、ある職人が金網でツルを作りました。工業用で使用していた金網をペンチなどの工具を使って作ったので、大きくて無骨でしたが、それが社内で評判になりました。
これを発展させて、金網を使ってトラやオランウータンなどを作り、動物園をテーマにした作品を荒川区の産業展で展示したところ、多くの来場者から「作ってみたい」という声をいただきました。モニター販売をしたところ、約50セットを完売。日本折り紙協会さんとも連携して、一般の方でも安全に使えるようなものにしようと、本格的な商品化を進めて、完成したのが現在のおりあみです。
―― 一般の方にも、貴社を知ってもらうことにつながったんですね。作る過程で、苦労したのはどのようなことでしたか。
素材の選定や目の大きさは、試行錯誤を重ねました。通常の金網はステンレスなのですが、それでは素材が固すぎて、折るのが難しいのです。その点丹銅は、よく伸びて加工がしやすいので、細い糸の形状にもできる。2011年から考案して、商品化するまでに4年ほどかかりました。
――さまざまな素材がある中で丹銅がマッチしたんですね。ベースとなっている金色は、高級感があります。おりあみは、どのような方に利用されていますか。
商品化した当初は、折り紙愛好家の方に使っていただくことが多いのではと思っていました。その方たちはもちろんですが、実際にはプリザーブドフラワーをご趣味にしている方や、アクセサリー作りをされている方からの引き合いも多いです。最近では、ハーバリウムの素材としても利用されています。
ユーザーの方が私たちが想定しえなかった方法で活用して、発信していただいているのは非常に喜ばしいです。使い道は無限にあると感じています。
「おりあみ/ORIAMI®」の紹介は、次のページに続きます。
その他の特集記事